古代の地球はいろんな意味で不安定だったに違いない。
だからひとつのパラメータをちょこっと調整するだけで、
古代地球の環境、そして生態系はがらっと変わったはずだ。
古生代の最初に、いわゆるカンブリア・モンスター達が登場したのも、
おそらくそんなきっかけがあってのことに違いない。
もしも、我々生物の形を決定する「デザイナー」(=「神」?)がいるのだとすれば、
カンブリア・モンスター達のデザインというのは、
まさにデザイナーとしてのデビューということになろうが、
その作品は決して成功とはいえないまでも、
試行錯誤の痕が見て取れるのには、感心してしまう。
ハルキゲニア、オパビニア、ベッツリコーラ、
そしてアノマロカリス。
後の恐竜のような派手さはないが、
デザインの奇妙さ・奇抜さという点では、恐竜に勝るとも劣らない。
円谷プロダクションが「ウルトラ怪獣」を世に出す何億年も前から、
それらに匹敵する怪物のデザインが、実際地球上に存在していたわけだ。
このデザイナーは、時折天才的な仕事をすることがある。
個人的には、三葉虫や中生代のイクチオサウルスなんかは、
このデザイナー渾身の力作。
特に後者は、のちのイルカやシャチで採用される、
「流線形」への収斂進化の先駆け的な存在だったにもかかわらず、
あっという間に滅んでしまったことは、
すぐれたデザインや芸術が必ずしも流行るわけではないという皮肉を含んでいる。