科学のめざましい発展により、
我々にとっての未知の分野は着実に減っているかもしれないが、
それでも宇宙の構造がどうなっているかについては、
永久に「仮説」のままなのではないだろうか。
そして、僕が宇宙論に惹かれる理由もそこにある。
おそらくこの分野に慣れていない人にとっては、
果たして宇宙の構造をどのように調べるのか、
見当もつかないことだろう。
ではどのように調べるのか、と問われても、
それを一言で説明するのは難しい。
銀河の赤方偏移、宇宙項、ダークエネルギー、
バリオン音響振動、ニュートリノ質量、等々、
推理小説の探偵さながら、
さまざまなファクターを吟味・検討し、
「仮説」ではあるものの、少しずつ真の宇宙の姿に近づいていくわけで、
そのスリリングな「謎解き」を、
豊富な図版とともに味わえるのがこの本である。
銀河の形は目にしたことがあっても、
それ以上の構造を思い浮かべることができる人は、
そう多くはないかもしれない。
宇宙の姿を数式で表現することも勿論大事だが、
それ以上にビジュアルで理解することが有意義なのであって、
内容はやや専門的ながら、
とりあえず「宇宙のかたち」を知りたい人には、
最初の1~2章ぐらいだけでも読んでみるとよいだろう。
直接観測できないものを可視化するという、
科学の楽しさ・美しさをあらためて感じさせてくれた。