奇書=奇妙な内容の本、と考えると、
そんなものは地球上に山ほどあるわけだが、
本書の中での奇書の定義は、
かつては非常識であったが、
今では常識となった内容が書かれた本
あるいはその逆の本
ということになっている。
なので、
ちょっと奇書と呼ぶには憚られるような書物、
例えば、
『ルバイヤート』(ウマル・ハイヤーム)
『月世界旅行』(ジュール・ヴェルヌ)
『天体の回転について』(コペルニクス)
のようなものも採り上げられている。
本書を読んでいて楽しいのは、
本そのものの内容だけでなく、
その本が著された時代の風潮や思想の傾向が、
丁寧に説明されていること。
書物とは、
それが異端であれ正統であれ、
著者の生きていた時代の空気を、
映し出すものなので、
この本の中で奇書を辿ることは、
歴史における価値観や思想のパラダイムシフトを、
なぞることに他ならない。
確かに『台湾誌』や『椿井文書』のように、
それ自体が興味深い本も紹介されていはいるが、
トンデモとかオカルトとか、
そっち方面を期待すると、
肩すかしを喰らうだろう。