9人の翻訳家 囚われたベストセラー

2019年のフランス・ベルギー合作で、
いかにもヨーロッパ映画らしい重厚なミステリー。

超人気小説の完結編の出版権を得た会社が、
世界同時発売を実現するために、

ドイツ、スペイン、中国、ロシア、デンマーク、
ギリシャ、ポルトガルなど、

各国から選ばれた翻訳者を監禁状態にし、
1か月の間、翻訳に専念させる。

プロジェクトも半ばのある時、
出版社に対して、

大金を払わなければ、
完結編の原稿を流出させる、

という脅迫メールが届くようになり、
9人の翻訳者のうち誰かが犯人ではないかと、
疑われるようになる。

毎日の翻訳作業はすべて監視され、
ネットも使えない環境で、
一体誰がどうやって原稿を流出させたのか。

9人の翻訳者の間でもお互いを疑うようになり、
やがて自殺者も出てくるなかで、
真相が明らかになってくる・・・

というストーリー。

途中から次々と謎が明らかになって、
最後の最後でドンデン返し的に、
一番大きな謎がバラされるという、
まぁよくある流れではあるのだが、

監禁状態で複数人が翻訳を並行するという
特異な状況や、

それぞれの翻訳者の、
「いかにもその国」的な個性、

一冊の本とその作者が、
登場人物すべてを支配するという、
その強力な求心力といったものが、

観ているうちに、
じわじわと染み込んできて、
気が付いたらのめり込んでしまう。

まさに、優良なミステリー小説に、
ぐいぐいと引き込まれる感覚が味わえるわけだが、

全体的に落ち着いたトーンで展開するため、
観る人を選ぶというか、

ズバリ、「読書好きな大人」が、
最適な鑑賞者となるだろう。

適正価格(劇場換算):2,000円