耳慣れない単語だが、
「contigion」とは、「接触感染」という意味。
監督は、スティーブン・ソダーバーグ。
マーティン・スコセッシ、サー・リドリー・スコットと並ぶ、
僕の中での天才映画監督の一人。
「トラフィック」「オーシャンズ11」「ソラリス」「エリン・ブロコビッチ」・・・
ソダーバーグの名作を挙げたら、キリがない。
僕には、彼を批判する糸口すらない。天才だと思う。
さて、この「コンティジョン」。
例によって豪華キャスト。
マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット、マリオン・コティヤール、ジュード・ロウ、ローレンス・フィッシュパーン。
オスカー俳優4人を含む、各人がそれぞれ主役を張れるような、
ソダーバーグ作品ならではの、顔ぶれ。
ただ、キャストのお蔭で、作品の評価が3割増しになることもある。
ukiyobanare的には、そこは厳しくチェックしたい。
内容は単純明快。
原因不明の、恐怖のウィルスが世界中に拡散し、
それを防ごうとする人、感染してしまった人、感染者を家族にもつ人、
感染しそうな人、それぞれの立場・主張を描いた映画である。
パンデミックもの、ディザスターもの、あるいはゾンビもの、
恐怖が拡散し、人々を混乱に陥れる、というのは、
もはやハリウッド映画の定番のテーマである。
そんなテーマを扱いながらも、
一流の作品に仕上げてしまうのが、ソダーバーグの恐ろしいところだ。
映画には、必ずしも「伝えたいこと」があるとは限らない。
しかし、優れた作品は、作り手が意図していないにもかかわらず、
受け手に、「何か」を伝えてしまうものである。
この映画が(ソダーバーグが意図していたかどうかは別として)伝えたかったことは、
人と人とのつながり、コミュニケーションだろう。
ただし、そのコミュニケーションの手段は、
映画内で頻繁に登場する、
ブログでもfacebookでもケータイでもない。
「伝染病」なのだ。
ブログで1,000万人の読者を集めた?
そんなの関係ない。伝染病は、1か月で億単位のヒトに感染できる・・・。
これを、テクノロジーによるコミュニケーションに頼り切った、
現代文明への警告ととらえるのは、考えすぎだろうか。
電子より早く、ウィルスは伝染し、ヒトを感染する。
ジワジワと怖い作品である。
そして、ソダーバーグらしく、
最後にオチを付けることも、忘れてはいない。
これは余談だが、この作品を観ながら、
例の原発事故のことを思い出した。
目に見えない脅威の可能性、ネットで拡散する噂、
政府の後手後手の対応・・・。
何かと考えさせられる作品である。
久々に、ハイレベルな映画を観た気分になった。