「世界を変えた6つの『気晴らし』」に続く、
スティーブン・ジョンソンによる「新・人類進化史」。
本書のテーマは、
あるひとつの発見・発明が、
まったく別の分野でのイノベーションを引き起こすという、
いわゆる「ハチドリ効果」について。
具体的には、
本書の第一章「ガラス」で触れている、
下記の事例が分かりやすいだろう。
グーテンベルクが印刷技術を発明したことで、
書物を読む人口が急増したことは、
世界史の常識でもあるわけだが、
それが「メガネ」の爆発的需要をもたらしたことは、
あまり知られていない。
読書が習慣になるまでは、
そもそも近視は存在していなかった。
一方、読書の習慣に関係なく、
人は歳をとるにつれて、
遠視(老眼)になるわけだが、
読書もスマホもなかった時代、
人々は自分が遠視であることを、
自覚する術はなかった。
それが、グーテンベルクの発明により、
読書が人々に浸透すると、
遠視であることを自覚する人、
近視になる人が増え、
それまでは修道院など、
一部でしか利用されなかった「メガネ」の重要が、
急増することになる。
このように、
一見関係なさそうに思える、
「活版印刷」と「メガネ」という、
2つの技術の発明が、
実は必然という糸で結び付けられている、
それが本書のテーマである。
話はそれで終わらない。
メガネの普及により、
レンズへの研究が進み、
顕微鏡の発明と、
細菌学やウィルス研究の進歩へとつながり、
マクロの世界では、
宇宙の遥か彼方を見渡せる、
天体望遠鏡の発明にまでつながった。
活字の発明が、
100億光年先の宇宙を眺めることにつながるとは、
誰も想像しなかったし、
僕もこの本を読むまでは、
想像すらできなかった。
このような驚くべきイノベーションの連鎖の、
6つの物語を本書では味わえる。