「0番目の患者」(ゼロ号患者)とは、
その病気における最初の患者、
という意味なのだが、
なぜ「1号患者」ではないのかといえば、
その患者の死亡後など、
あとになってから、
その患者が実は最初の症例だった、
ということが分かったケースだから、
というのが僕の理解。
要は、様々な病気や症状における、
最初(と思われる)事例を紹介した本で、
なぜそのような病気や怪我を起こしたのか、
そしてそれを知った医師は、
どのように対処したのか、
についてのエピソード集となっている。
ただ、ひとつひとつのエピソードは、
割と軽く読み進められるのだが、
著者による「あとがき」を読むと、
割と重い問題の存在が明らかになる。
たとえばそのうちのひとつは、
「診察」と「治療」の問題で、
誤診だったが治療がうまくいくケースもあれば、
その逆に、
診断は正しかったが治療が失敗したケースもあり、
つまり「ゼロ号患者」の背景には、
ハッピー・エンド以上にバッド・エンドの物語が、
潜んでいることになる。
その他にも、医師と患者の関係、
患者のプライバシーや遺族の心情、
医学界における競争など、
様々な問題が横たわっているのだが、
それは個々のエピソードを読むだけでは、
なかなか理解することはできない。
新型コロナウィルスの流行により、
我々一般人も、
医療について考える機会が増えてきた。
その一貫として、
この本を読んでみるのもよいだろう。