深緑 野分 作「戦場のコックたち」(創元推理文庫
第二次大戦中、
コック兵として従軍したアメリカ人の主人公が、

ノルマンディー上陸作戦から、
ドイツの降伏までの数年間、

戦場で生と死や友情など、
様々な経験を通じて、
成長してゆく物語。

2つの点で騙された。
(決して悪い意味ではなく)

その1。

この本が創元推理文庫であることと、
様々なミステリー賞を獲っていることから、
本格的なミステリーだと思っていた。

確かに戦場の生活で、
いくつかの不思議な出来事が起こり、
それを主人公たちが解決する、
というエピソードが全編に散りばめられているが、

ミステリー好きにとっては、
え?というレベルのもので、
とても楽しめるものではない。

そもそもこの小説において、
ミステリー要素はほんの「スパイス」であり、
評価すべきはそこではないのであろう。

その2。

「コック兵」という、
やや特殊な任務についての、
あれこれと興味深い描写がメインかと思ったのだが、
そうではなかった。

最初のうちこそ、
料理に関するシーンはあるが、

その後、戦火が激しくなるにつれ、
コック兵とはいえライフルを持ち、
最前線で携帯食を食べるシーンが大部分となり、

もはや主人公がコック兵であることなど、
正直どうでもよくなってくる。

とまぁ、
自分としては最初の2つの期待を、
大きく裏切られた結果となったのだが、

十代の少年コック兵が、
戦場で死と向き合いながら、
人間として成長してゆく、

という物語なのだと割り切れば、
それなりに良い作品なのだと思う。

ただ、あらかじめそうだと知っていたら、
自分は読んでなかったw

たぶん主人公の同じ世代ぐらいの、
若者には共感を得られると思うし、
むしろ読むことをオススメするが、

アラ50のオヤジには、
少しダルかったかな…。