1980年代に全12回で放送された、
伝説の番組「シルクロード」を、
NHKオンデマンドで視聴した。
我々日本人の民族的ルーツには、
まだ定説はないが、
文化的ルーツとしては、
中国が絶対的な存在であり、
そしてその中国の文化を考察するにおいては、
「シルクロード」による、
西域との関係を無視することはできない。
いや、無視することができないどころか、
文化だけではなく、政治面においても、
漢民族の王朝にとっての、
最重要課題は、「西域異民族との対峙」、
これに尽きるわけで、
昨今のウィグル問題も、
(実情はよく分からないながらも)
その延長と捉えることができるだろう。
つまり、中国とその周辺諸民族との、
交流と攻防こそが、
「アジア全体の歴史の肝」と言ってもいい。
ソビエト崩壊後、
中央アジアにもいくつかの国家が誕生したが、
それでもまだ、「中国国内」には、
様々な民族の生活と文化が息づいていることを、
この番組は教えてくれる。
そして、昨今の中共の状況をうかがうに、
現代ではこのような番組を撮ることは、
ほぼ不可能であり、
まさに貴重な映像が収められた、
ドキュメンタリーである。
西安からカシュガルまで、
タクラマカン砂漠、パミール高原といった、
まさに「天然の要塞」を越える旅、
現代の装備を以てすら困難であればあるほど、
玄奘をはじめとした、古代の人々による、
苦難のほどを思い知らされる。
この番組の主眼は、
「かつてのシルクロード」を知らしめるだけではなく、
「今のシルクロード」を知れることにも、
あるのではなかろうか。
(「今」といっても、既に40年前だが)
様々な顔つきの人々が、
異なる言葉を話し、異なる音楽を奏で、
異なる生活をしている、
そのバラエティに富んだ世界が、
「シルクロード」という一本の道に沿って、
過去から現代に至るまで、
息づいているさまを知ることができる。
この番組撮影から40年、
中国内の情勢はだいぶ変わったとは思うが、
ここに収められた人々やその子孫たちが、
今も変わらずその生活や文化を伝えていると、
信じたい。
ただ、この番組で語られているのは、
あくまでも歴史のほんの一部であり、
表舞台に登場することもなく、
滅んでいった民族や国も数多くあるはずで、
この番組をきっかけにして、
それらについても知りたいと思っている。
いま学ぶべきは中央アジア・・・
その想いをますます強めてくれた。
※あと、これは愚痴だけれども、
真面目にNHKの視聴料を払っている人には、
オンデマンドを無料開放してくれないかしら・・