2018年、ドイツのコメディ。
ホームパーティに集まった、
男女5人。
その構成がまた絶妙で、
まったくの他人というわけではなく、
ホスト夫婦と、
その妻の弟夫妻と、
ホスト夫婦の幼なじみ男性、
という感じで、
お互いの性格とか背景とかを、
知り尽くしているという設定なので、
無駄なく本題へと、
没入できる仕掛けとなっている。
さて、事の発端は、
ホストの妻の弟が、
生まれてくる息子に、
「アドルフ」と名付ける、
と告白したことから始まる。
「アドルフ」とは言うまでもなく、
アドルフ・ヒトラーの名前なわけで、
我々が想像していたよりも、
ドイツ本国では、
その名前に対する抵抗が強いことが、
意外といえば意外なのだが、
前半は、名前と政治に関する論争が、
繰り広げられる。
実はこの映画、
「アドルフ」論争が一段落したあとの、
後半が見どころで、
一見、家族同然の5人なのだが、
各人の秘密が徐々に暴露されていく、
緊迫した展開となる。
舞台はリビング、
そこに集まった人々が、
ワインと共に饒舌になっていき、
段々と緊張感を高めていく、
というのは、
個人的なツボなのだが、
この映画は、まさに「どストライク」。
CGもエイリアンも銃もいらず、
会話の応酬だけで、
十分に映画は成り立つものだと、
あらためて感心させられた。
いやぁ、いい映画ですよ、これ。
飛躍しすぎかもしれないけれど、
日本の伝統芸能の浄瑠璃とかって、
こんな感じじゃないですか。
派手な演出はないけれども、
人物のやり取りでドラマが形成される。
その江戸の伝統を受け継いだのが、
漱石の小説だったわけだけれども、
この映画もその流れを汲んでいる、
というのはお門違いかも知れないが、
楽しむ感覚としては同じかな。
要するに「ホームドラマの濃縮版」。
登場人物達と同様、
アルコール片手にのんびりと楽しみたい。
適正価格(劇場換算):1,800円