2017年、太陽系外から、
突如として侵入してきた、
謎の物体「オウムアムア」。
葉巻状または円盤状と思われるが、
比率が極端である形状や、
説明のできない加速によって、
太陽系から遠ざかったことなど、
それまでの知識では説明できない、
数々の謎を残したことで有名になったが、
その論争の最中に、
ハーバード大学の天文学科長という、
まさに科学の最先端にいる著者が、
「オウムアムアは、
異星人によって作られた人工物である」
と主張したのが本書である。
先に結論めいたことを書くならば、
本書が発刊されてからも、
オウムアムアの謎解きや研究は進み、
今では、
これは人工物ではなく、
極めて特異ではあるが、
自然に生じた天体である、
ということで、
ほぼ決着をみている。
かといって、
それがすなわち、
本書の価値を低めるものではなかろう。
というのも、
本書の主眼は、
オウムアムアは異星人の建造物である
ということ自体ではなく、
科学者は、いかなる場合でも、
偏見に捉われることなく、
謙虚かつ柔軟に、
可能性のある説を追究すべきだ、
という主張にあるからである。
あまりにも突飛な説、
特にそれが、
異星人の存在を主張するなどという、
既にエンタメ界(映画・小説等)で、
独自の進化を遂げている事柄であれば尚更、
それを学説として主張する学者は、
極めて少ないだろうことは想像がつく。
なぜならば、
それに研究費が付くことはないだろうし、
学者としての出世も望めないからだ。
著者はそのような、
学界全体に広がる風潮を厳しく批判し、
まるでホームズさながらに、
可能性のある説明であるならば、
それがいかに意外であっても、
真実とすべきである、
と強いメッセージを送っている。
これは学界に限らず、
我々サラリーマンでも同じことで、
上司がそう言ったから、
クライアントがそう望んでいるから、
・・・・
という理由だけで、
正しいと思ったことを、
安易に曲げてはいけない、
という教訓と理解した。
惜しむらくは、
話があっちこっちに飛んでしまい、
若干読みづらいこと。
まぁそれも、
著者の熱意によるものだと割り切れば、
どうということはないが。