大学受験で古典文法に目覚めて、
大学では日本語日本文学科へ進学し、
卒論は記紀歌謡となった。
科学とは異なり、
この分野にもう新たな発見などはない、
(新たな文献の発見はあるかもしれないが)
とは分かってはいるものの、
やはり自分にとってのアイデンティティというか、
「なつかしき」ジャンルには相違ない。
断定「なり」と伝聞推定「なり」の違いとか、
「まゐる」と「まゐらす」の違いとか、
この本で扱っているテーマは、
まさにそんな自分の大好物。
今更驚くような刺激はなかったが、
まるでお袋の味を久々に食べたような、
「アットホーム感」があった。
特に、最終章でわずかながら触れられている、
なぜ和歌が5・7・5・7・7になったのか、
についての論考は、
これは自分にとっての、
いわば積年のテーマでもあるので、
興味深く読んだわけだが、
和歌の構造を、
「2:3」という比率で説明する試みは、
斬新ではあったものの、
その前提として、
「5音」を「2+3」としたところから飛躍して、
「2:3」と解釈できる、としたのは、
強引というか、
こじつけにしかならないのではないか。
(もちろん、5音の大部分が、
2音+3音に分解できることを、
立証していれば、話は別だが)
最後の最後で、
ケチを付けてしまった本書であるが、
全体としては、
久々に自分の中の「古典文法愛」を、
呼び覚ましてくれる良書であった。