普段、この手の本はほとんど読まないのだけれど、
クラークの遺作であるのと、フェルマーの最終定理と異星人とがどのように関わるのか、
に興味があったので、読んでみることにした。
正直な感想としては、イマイチだ。
そもそもこの小説の、最初から80%は、SFではなく、
主人公であるスリランカの数学者の半生を描いているにすぎない。
その主人公が、フェルマーの最終定理を証明したことで、
一躍有名人となるわけだが、
残念なことに、そのことと、残り20%に登場する異星人とは、何の関連性もない。
やはり読者としては、フェルマーの最終定理には、宇宙の真理に関する、
何らかの秘密が隠されていた、、みたいなオチを期待するのが自然だろう。
あと、これは個人的な意見だけれども、
フェルマーの最終定理レベルの題材を、
小説とはいえ、何の説明もなく「解けた」とするのは、
ルール違反ではないかと思う。
小説中で、あの難解とされるワイルズの証明を批判しているのであれば、
では主人公は何を手がかりに証明したのか、
もちろんフィクションだとした上でも、
ヒントぐらいないと、リアリティさに欠けてしまう。
ハードなSFを期待していたのだが、
「スリランカ人の数学者の家族愛」がテーマの作品なのかもしれない。