清朝時代の中国で書かれた、怪奇・珍奇短編集。
大学入試の時の漢文の教材で、
いくつか目にしたことがあったが、
あらためて読んでみると、まことに面白い。
大抵は美女に化けた幽鬼や狐と、主人公が関係を持ち、
幽界・仙界とこの世を行き来しつつストーリーが進む、
というパターンが王道なわけだが、
その想像力の豊富さたるや、驚嘆するばかりである。
おそらく、中国ではかなり昔から伝わっている話を題材にしたものも多くあるだろう。
そう考えると、我が国の「今昔物語集」「宇治拾遺物語」といった古典に、
似たような話が散見されるのも、頷ける。
のみならず、漢文の素養をベースとしている明治・大正期の文豪たち、
ぱっと思い浮かぶだけでも、
漱石、鴎外、綺堂、鏡花、百閒、芥川、といったあたりに、
明らかにこの「聊斎志異」をネタにしているような著作があることからも、
「聊斎志異」が我が国の文学に与えた影響の多大なることを、知ることができる。
それにしても、同工異曲の短編が多いにもかかわらず、
それぞれが不思議な魅力を放っているのは、
蒲松齢の創作力のなせる業であろう。
まさに、東洋におけるファンタジー古典の名作である。