小説において人物に名前を付けるのが、どれほど難しいかということを述べた、
いかにも久作らしい視点のエッセイである。

名前から想像される性格が、そのキャラクターとかけ離れていてはいけないし、
かといって、そのままでは面白味がない。

実際にありそうな名前だと、そのキャラクターが凶悪犯人だったりすると、
実際の方に申し訳ないし、
赤ん坊にはかわいい名前を付けるべきであるが、
それが成長して悪人になったりすると決まりが悪い、

などと、成程、と思わせる苦悩について紹介している。

ただまぁ、名作にはすぐれた命名が多いというのは、事実だろう。

小説の場合だと、目で読むので、字面が重要であるが、
浄瑠璃の場合などでは、耳で聴くので、名前の響きが問題となる。

個人的には、「冥途の飛脚」の「梅川・忠兵衛」あたりは、傑出した命名だと思う。