たまにカレーとか牛丼が食べたくなると一緒で、
やたらと古典が読みたくなる時がある。
かといって、日本古典の物語を読むのも、今更ダルいので、
自然と中国の思想書とかになってしまうのも、
自分も、もう若くはない証拠なのか。
明末の混乱期に洪自誠によって書かれた「菜根譚」。
中国よりも日本での方が盛んに読まれたらしく、
いまだに愛読者も多いと聞く。
洪自誠という人は相当の知識人だったそうで、
仏教・道教・儒教の過去の書物や、
唐代の詩人たちの作品からの引用を散りばめながら語られるその内容は、
禅の思想に近い印象があり、
それが日本人に受け入れられている理由なのかもしれない。
僕が興味をもった一節は、後集78の、
「真空不空」(真の空というも、空ならず)
という部分。
これは、かの「色即是空。空即是色。」にも通ずる、
仏教の思想であるわけだけど、
最新の量子物理学では、
完全なる真空というものは存在せず、
真空と思われる空間でも、
実はそこにはエネルギーのゆらぎが存在している、と言われていて、
それを300年以上昔の人に、
こういう形でズバリと言われてしまうと、
科学と宗教・思想の根幹にある共通部分のようなものについて、
考えてみたくもなる。