もし、この本に書かれている「科学的事実」だけを抽出するならば、
おそらく30ページ以内でまとめられるだろう。
その約10倍のページは、
それら「科学的事実」を発見・検証するための実験及び、
それを可能とする施設を、実際に見聞した記録からなる。
ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を覗いてから400年の間に、
天文学を取り巻く状況はめまぐるしく進歩した。
観測の主役は、光学望遠鏡から、電波望遠鏡、
そして素粒子をとらえる仕掛けへと変わってきた。
この本の主眼はおそらくその点にあるのだろうが、
いかんせん、描写が長い。
著者はインド人。
さすがは『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』という、
二大叙事詩を生み出した国だと、納得できてしまうところでもあるが、
純粋な科学書を期待している人にとっては、
ちょっとがっかりしてしまうだろう。
であれば、思い切って、
もっと万人受けする「科学風エッセイ」にしてしまった方が良いかとも思うが。
(もしかしたら著者はそのつもりなのかもしれない)
エピローグにおいて、きっちり総括するのかと思いきや、
ここにおいても、相変わらず叙事詩風の後味の悪い終わり方。
著者は科学者ではなく、詩人向きだろう。