この本で著者が書きたかったのは、序文に書かれているとおり、
生命の進化を、絶滅という観点から眺め、
進化が「必然」ではなく、いかに「運」に左右されているか、について考える
ということだったはずなのだけど、
それについては、結論が述べられているだけで、
そのメカニズムや事例などには、ほとんど触れられない。
そして、何よりもこの本で一番力が入れられているのは、
進化論とは、「説明」と「理解」という180度異なるアプローチが可能な科学であり、
それゆえに、専門家以外には誤解されやすいし、
かの有名な、ドーキンスvsグールドの論争も、この二面性に起因している
ということである。
まぁ、それならそれで全然構わないのだけれど、
純粋な科学本だと思って手に取ると、がっかりするだろう。
我々は「進化論」といかに向き合うべきなのか、
そしてそれを敷衍して、科学や歴史はどのようにアプローチされてきたのか、
という、人文寄りな内容になっているため、
理系の人よりも文系の人におすすめしたい。
個人的な感想でいえば、
グールドが「歴史」の方面から進化論にアプローチしたというのであれば、
彼の主張から導かれる、「不運による絶滅」の妥当性について、
もっと踏み込んでほしかったし、そうすべきだったのではないだろうか。
ともあれ、「進化論」というのが、エクセレントな科学であるのと同時に、
厄介な二面性をもっているということは、納得できた。
そもそも「進化論」には、
ヒトはどこから来たのか、
ヒトは進化の成功例たり得るのか、
といった問題が含まれるため、
我々は客観的にアプローチできないという、ハンデキャップがある。
ではどうすればよいのか。
この本が、多少なりのヒントを与えてくれているように思う。