評論家が書く作曲家伝なんかは、ちっとも面白くないが、
作曲家が書く作曲家伝は面白いということに気付かせてくれたのが、この本。
上巻ではバロックから後期ロマン派までの10人の作曲家を採り上げている。
バッハ
モーツァルト
ベートーヴェン
シューベルト
ベルリオーズ
メンデルスゾーン
ショパン
シューマン
リスト
ワーグナー
意外にも、シューベルトやベルリオーズなどは、
日本ではあまり逸話を耳にする機会が少ないので、
とても興味深く読めた。
バッハならブランデンブルグ協奏曲、
モーツァルトはハ短調のピアノ・コンツェルト、
ワーグナーならトリスタン、といように、
読みながら自分の好きな曲たちが頭を巡ってくれて、
とても心地よい。
下巻と合わせて20人の選抜なんだけれども、
上巻ではあと、ヘンデル、ハイドンは入れて欲しかったな、、とも思う。
あらためて音楽史を振り返ってみると、
バロックの巨匠、というような何となく古い感覚のする、
バッハの没年は1750年。
ベートーヴェンが生まれたのはそのわずか20年後だし、
そのベートーヴェンの没年の14年前に、
すでにワーグナーはこの世に誕生している。
そう考えると、クラシック音楽の歴史というのは、
長いようで実は一瞬なのだと思えてしまう。
その一瞬の間に、これだけ多様な形式や表現方法を生み出せたということは、
やはり奥が深いジャンルであると感心せざるを得ない。