東京の地名とそれにまつわる有名人の思い出とを、
横尾節で語る短編エッセイである。
この類のエッセイは、大概が「土地褒め」だけで、
どれもこれも似たような内容になるのだけれども、
そこは流石の横尾忠則。
土地だけではなくむしろ人物の思い出がメインになっているので、
読み応えがある。
例えば、こんなカンジ。
江戸川乱歩と銀座
夏目漱石と護国寺
泉鏡花と浅草
葛飾北斎と柳島妙見
太宰治と吉祥寺
水上勉と成城
芥川龍之介と飯田橋
澁澤龍彦と慈恵医大病院
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とまぁ、知る人ぞ知る、
というような組み合わせが多いのだけれども、
中には、
モーツァルトと月島
なんてヘンテコな組み合わせもある。
読んでみたら、別に何てことはない。
やっぱりモーツァルトは天才だなぁ、という話から始まり、
朝日新聞社の帰りに、初めて月島に立ち寄って、
お好み焼きとラムネを注文しました、と。
なんじゃそりゃ、ということなのだけど、
モーツァルトにも月島にも、
それぐらい軽妙な感覚の方が、なぜか合っている。
そんなカンジの脱力系エッセイ。