「まだ科学で解けない13の謎」(マイケル・ブルックス)
僕を含めた、科学が専門でない人間にとっては、
「選ばれた事象しか知らされない」というジレンマがある。

すなわち、幾多の実験・学説の中から、
「まぁこれが、正解だろう」と言われるものだけが、
”真実第一候補”として提示されるわけだ。

しかし、その”真実第一候補”の陰で切り捨てられていった、
その他大勢の観測結果や学説の中にも、

”第二候補”とまではいかないまでも、
かなり興味深いモノが潜んでいることが多い。

そんな13のトピックスにあらためてスポットを当てる、
というのがこの本の主旨で、

第12章の「プラシーボ効果」のようにもはやお馴染みになったものから、
第4章の「常温核融合」といった眉唾的なものまで、
どこから読んでも、楽しめる。

個人的に一番興味深かったのは、
第2章「パイオニア変則事象」

もはやノスタルジックなネーミングの2隻の宇宙探査機の軌道が、
どうも物理法則からズレているようだ、という問題。

既知の法則では説明が付かない事象にぶち当たったとき、
新説を作り上げることの方が、
既存の法則を修正するよりもずっと楽な場合がある。

ましてやそれが、
”絶対不変の真実”であると思われている法則であればあるほど、
心理的な意味での修正は困難になる。

この「パイオニア変則事象」の場合がまさにそれで、
パイオニア探査機の軌道のズレは、
ニュートン力学を修正する必要があるのでは?という可能性を提示している。

ニュートン力学を修正する、
なんていうとバカげたことのように聞こえるかもしれないけれども、

かつてアインシュタインが、
ニュートン力学では説明できない水星の近日点移動を、
相対性理論を用いて再計算をしたことで、

自説の正しさを華々しく実証したことを思い出せば、
(少なくとも僕のような一般人にとっては)それほど驚くには値しない。

要は、惑星の軌道レベルであればニュートン力学にズレが生じるのは仕方ないけれども、
果たして宇宙探査機の軌道レベルでもズレが生じるものなのだろうか

ということだ。

ニュートン力学が通用するのは、我々の生活感覚に近い世界だけであり、
ミクロの方にいけば量子力学の、マクロにいけば相対性理論の手助けを、
借りなくてはならなくなる。

ニュートン力学とはいわば「見せかけの真実」なわけだけれども、
果たしてそれが通用しなくなる境界はどこなのかと問われれば、
明確に数値化することはできない。

マクロの方にいけば、それは漠然と、
惑星間レベルの空間を扱う場合は相対性理論、と考えられているのだが、

実はもっと我々の感覚の近いところでも、
アインシュタインの助けを借りなくてはならないかもしれないのだ。

さてこの「パイオニア変則事象」はどのような解決をみるのか。
密かに注目していたい。

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