日本で「アーティスト」というと、不思議な
ことに(特にポップ・ミュージックの)演奏家を指すことが多いけれど、この本で採り上げているのは、
画家・彫刻家を中心とした、いわゆる「芸術家」「デザイナー」と呼ばれる人々。
ダ・ヴィンチから始まり、セザンヌ、北斎、マグリット、イサム・ノグチ・・・と、実に多彩。
85人の「名言」を収録している。
芸術家の言葉というのは、断片的にフレーズだけ拾ってみても、
イマイチ意味が分からないことが多いのだけれども、
この本のすごいところは、見開きの半分を使って、その作家の代表作をカラーで載せているところである。
だから、絵だけをパラパラと眺めていても、85人の代表作が見れるわけだから、美術の入門書としてももってこいなわけだ。
最初に書いたように、この本は「芸術家」と「デザイナー」とを同居させているので、似て非なるこれら2つの人種の違いを、その言葉から実感することができる。
例えば、これは芸術家の言葉。
芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、見えるようにすることである。(パウル・クレー)
次に、これはデザイナーの言葉。
すべては相対的なんだ。デザインとは「関係性」だ。そこからデザインが始まる。(ポール・ランド)
違いがお分かりいただけだだろうか。
すなわち、芸術というのは、自己の中に解決を求めるもので、デザインというのは他者との関係性の中に解決を求める。
芸術が自己複製的であるのに対し、デザインはコミュニケーションそのものだと言ってもいい。
ただ、そんなことを考えなくても、歴史に名を残す85人の言葉というのは、それぞれ輝いていて、読む側は身が引き締まる思いがする。