「白」(原 研哉)
「白」と聞いたとき、
人は何をイメージするだろうか。

空白? 虚無? 色?

おそらくデザイナーならば、
「白とは何もないのではなく、白という存在である」と答えるだろう。

もちろん、どれも正解である。

原研哉という人は、もちろんデザイナーであるわけだけれども、
この「白」というものに、
デザインとしてのアプローチではなく、
文化的なアプローチを試みているのが、この本だ。

本というものは目次を見れば、その内容はだいたい理解できる。

この本の目次はこんな感じ、

第一章 白の発見
第二章 紙
第三章 空白 エンプティネス
第四章 白へ

何とも簡潔で、的を射た章立てだと思う。

この4つの章のタイトルを見ただけで、
白というものの本質に、だいぶ迫れるのではないだろうか。

さらに、まえがきではこんなことを書いている、

「・・・・・人と意思の疎通を行う時には、
一方的に情報を投げかけるのではなく、
むしろ相手のイメージを受け入れる方が有効である場合が多い。

つまりいかに多く説得したかではなく、
いかに多く聞けたかが、コミュニケーションの質を左右する。

だから人々は、歴史の中では、
時に意図的に空っぽの器のようなものを作って、
コミュニケーションを図ってきた。
(中略)
当初は「空(うつ)」について書こうとしていた。
しかし、書き進むうちに「白」にたどり着いた。

「空」を掘り進むスコップの先に、
「白」という概念がこつんとあたったのである。・・・・・」

「『空(うつ)』を掘り進むスコップの先に、
『白』という概念がこつんとあたった」というフレーズが、

まさに「白」の本質を語っているのであり、
それは、「空」の次の段階として「白」があるとも読めるし、

逆に、「白」という層の上に「空」というものが成り立っている、
とも、どちらとも取れる。

別の言い方をすれば、
「空」と「白」の関係性を紐解くことこそが、
デザインの、そして文化のある一面の理解を深くさせるということなのだ。

では「白」とは一体何なのか・・・。

興味を持った方には、
ぜひ一読されることをおすすめしたい名著である。

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