いわゆる「琳派」という括り方がキライな
自分にとって、宗達を「琳派の祖」と位置付けることは、常々納得できない、と思っていた。
それはテーマとか技法といったレベルの問題ではなく、「作品として向いているベクトルが違う」という感覚レベルの問題で、だからこそ一方で、それを明確に言葉にできないでいることがもどかしくもあった。
しかしこの本は、宗達とは何か、魅力はどこにあるのか、いわゆる琳派とは何が違うのか・・といった核心について、何とも明快に、しかも平易に解説してくれている。
しかも後半、宗達とマチスの類似性を述べ、そこから「宗達とジャズ」へと論を進めていくあたり、「やられた!」と思えるほど、その語り口は魅力的である。
絵を見る楽しみは何か?と問われたら、それは「様々なモノの見方が楽しめること」だと思う。
1枚の絵を見せられたとき、それはどういう絵なのかというきっかけさえ与えられれば、あとは自分の想像力なり妄想で、そこから色々な世界を彷彿とさせることができる。
その「きっかけ作り」に、この本はまさにうってつけ
なのであって、読み終わった後に、すぐに宗達を見に行きたいという欲求に駆られてしまった。