「日本的感性~触覚とずらしの構造~」(佐々木健一)
公私ともども、ぐちゃぐちゃな状態になっており(継続中)、
久々の更新。

主に万葉集と二十一代集の和歌を読み解くことで、
日本的感性をあぶり出そうというのが、この本の主題。

和歌論としては秀逸だと思うけど、
それを「日本的感性」とまで敷衍できるかどうかは、
ちょっと疑問。

和歌というのは、非常に限られた人種だけの為し事であり、
かつその成熟のピーク期間は短い。

確かに他の芸術にくらべて、
感性が流入している度合いは顕著だと思うが、
「和歌=日本人の感性」と決めつけてしまうのは、
やはり狭い見方だろうと思う。

最近では和歌のデータベース化が急速に進んでいるので、
例えば「匂ふ橘」なんて入力して「検索」ボタン押すだけで、
その句を含んだ和歌がズラリと、検索結果に出てくる。

国文学界の「聖書」とも言える「国歌大観」も、
CD-ROMで手に入るようになったのだから、
和歌を研究する人にとって、実はこれほど楽な環境はない。
(但し「国歌大観」のROMは30万円もする・・)

つまり乱暴に言ってしまえば、
「日本人はかくあるべき」という結論を先に持っていて、
それを裏付けるような2~3の和歌の例を知っていれば、
そこから逆引きして、それを裏付けるような「和歌史」を構築することは、
比較的容易なわけで。

著者の名誉のために言っておきますが、
何もこの本がそういうことをしている、
などということはちっとも思っていませんので、悪しからず。

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