「マーラーと世紀末ウィーン」(渡辺 裕)
マーラーの曲は、作曲家の特異な(むしろ「病的な」)個性と、
文化史上の特殊な背景との両要素が、
明確な形で内部で脈打っているという点でとても魅力的である。

音楽史上では、絵画史上においてエゴン・シーレがそうであるように、
未だに「異端」扱いされるマーラーではあるが、

それはなぜなのか、如何なる時代背景がそうさせたのか、
というテーマに迫ろうしたのが本書である。

型破りでありながらも、
シンフォニーという形式に拘ったマーラーの苦悩と矛盾。

そこまで踏み込むにはあきらかに頁数が足りないのだけれども、
それでも、個人と時代という視点から音楽を分析しようとする試み自体は、
有意義なことに違いない。

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