「眼の誕生―カンブリア紀大進化の謎を解く」(アンドリュー・パーカー)

地球上の生物は、
過去何度もの絶滅と進化を繰り返してきた。

ネタ的には絶滅の方が興味深くはあるが、
「カンブリア大爆発」と呼ばれる大進化については、
生物の進化史上最大のイベントだったと言ってよい。

神がデザイナーだとしたら、
5億4000万年前にカンブリア紀が始まるときに、

そのデザイナーは、文字通り「神懸った」のである。

それまでの単調なデザインからは路線を180度転換し、
無限の想像力で、奇妙な生物たちを誕生させた。

現代のハリウッドでも、
ここまでの生物デザインをするのは難しいのではなかろうか、
と思えるほどである。

しかもこの「デザイン・リニューアル」は、
確信をもったものだった。

なぜならば、現代の生物の構造は、
基本的にはこの時に誕生したデザインから変更されていないからだ。

このデザイナーの画期的な発明のひとつは、
「眼」だった。

あたかも、自らの作品を見てくれと言わんばかりに、
主に節足動物たちに「眼」を取り付けたのである。

ここがこの本の一番「肝」にあたる部分なのだが、

「眼」を取り付けたことは、
デザイン・リニューアルのひとつだったわけではなく、

「眼」を取り付けたことこそが、
デザイン・リニューアルを発動させたというのである。

いわゆる「鶏が先か、卵が先か」というやつだ。

僕は進化学の専門家ではないので、
この本の説が正しいのかどうかは、
ジャッジできない。

ただ、科学読み物としてはとても興味深く、
一読の価値はあると思う。
それが正しいのかどうかは、各人が考えればよい。

「眼」を獲得したことが、
進化の原因であったにせよ、結果であったにせよ、

それが生物デザイナーにおける、
最高の仕事であったことは、間違いない。

※但しそれは、我々の太陽光の領域が可視光線だからで、
仮にそれがX線であったなら、
今のような「眼」は誕生しなかっただろう。

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