「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」(ピーター・D. ウォード)

 

原題は、「Out of Thin Air」(薄い空気の中から)。

つまり、酸素濃度が進化を決定した、というのがこの本の主旨で、
邦題のように特に恐竜から鳥へ、ということに限定するのではなく、
カンブリア爆発から中生代の終わりまで、
そして最後には、今後の地球においての、
酸素濃度が生物に及ぼす影響について、述べられている。

著者いわく、酸素濃度が低いときは、種のレベルの多様性が促進し、
逆に濃度が高いときは、同一種内でのバリエーションが増加する。

これまで、気温(あるいは水温)と進化の関連について述べた本はあったが、
酸素濃度と結びつけたのは斬新で、

すべてが正しいとは思わないが、なるほど、と思わせるだけの説得力はある。

少なくとも、ペルム紀における異常なほどの酸素濃度の高さが、
昆虫や樹木を巨大化させたことは、化石からも明らかなわけだし、
進化と酸素濃度が無関係である、と言い切ることの方が難しそうだ。

ただ、問題は2点ほどあると思っていて、
まずは、過去5億年に渡る酸素濃度のデータが、100%正しいのか、ということ。

これは非常にセンシティブな問題なので、一番ツッコミが入る可能性が高い。

それと、酸素濃度の違いが進化を促進させたわけではなく、
進化を促進させた別の原因があり、その「結果」として、酸素濃度が変動したのではないか、ということ。

例えば、地球規模の火山の噴火があれば、
二酸化炭素は増加し、山火事で植物が焼き払われることで酸素は減少する。
当然、生物への影響も大きいであろう。

この場合、犯人は、火山噴火なのかそれとも酸素の減少なのか。

地球科学を考えるうえでは、様々な要素が連鎖的に反応することは常であるため、
一つの原因だけに絞って断定することは、少々危険である気もする。

ともあれ、酸素濃度という新しい視点から、
生命史を眺めることができるという意味では、とても新鮮で刺激的な本だと思う。

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