「日本語の個性」(外山 滋比古)

 

どうもタイトルに「日本語」という文字が入った本は、
目に付くと買ってしまう傾向にあるらしい。

いかにも外山滋比古らしい、言語に関するエッセイ集なのだけれども、
いつ読んでも、思わず頷いてしまう箇所が多い。

例えば、第二次大戦後のイギリスのこととして紹介されているエピソード。

イギリスは戦勝国であったが、経済的には苦しく、
とにかく輸出優先主義に傾かざるを得なくなった。

そんな中、議会で貿易担当大臣が、現在の輸出の状況についての説明を求められた際、
こんな風に述べたという。

「現在、”英語”が我が国の主力輸出商品であります。」

もちろんここには皮肉も含まれているのだろうが、
しかし、このように言い切れる自信があり、かつ事実であったことも間違いない。

このようなエピソードを交えつつ、外山がこの本で力説しているのは、

言語に限らず、日本人は文化の輸入には優れていたが、輸出はヘタクソだということ。

その通りだ。

文学にせよ、和食にせよ、音楽にせよ、果たしてどれだけの日本文化が、
「私たちが期待しているとおりに」海外に伝わっているのだろうか。

最近のニュースで、海外へ和食が誤って伝わっている、というようなのをチラ見したが、
これは受け入れる側(外国)の問題よりも、発信する側(日本)の姿勢・制度を、
まず見直すべきなのではなかろうか。

この本はもう40年も前に出た本なのだけれども、
言語と社会、文化の関係については、今もって参考にすべき内容が多い、

というか、約半世紀も、このような問題に誰も手をつけることなく、
なんとなく「時代の遷り変り」という感覚で過ごしてしまっている気がするのは、杞憂だろうか。