「『偶然』と『運』の科学」(マイケル・ブルックス)

現代社会は、そしてそれを支える科学そのものも、
曖昧さを排除することで成り立っていると思いがちである。

本書は、実はそうではなく、
宇宙の誕生も、生命の登場も、
そして数学や物理といった「予測可能」と思われるものも、

偶然や不確実さやランダムさにどれほど支配されているか
について語った本である。

著者の異なる27編の文章から成り立っており、
それぞれの関連性についても配慮されているので、
実に読み易い(そのことと内容が平易かどうかは別問題である)。

カジノやAIのようなお馴染みの話から、
進化学や宇宙論まで、

扱われている話題は豊富で興味が尽きないのだが、
逆に、科学の幅広い分野に興味がない人にとっては、
退屈な部分の方が多いのかもしれない。
(アマゾンの書評がやたらと辛口なのはそのせいか?)

どうやら我々の脳は、
偶然や不確実性といったものに慣れているようには思えないのだが、

そのことと、
宇宙の歴史の至るところにそれらが顔を出すこととの矛盾(?)が、
謎といえば謎である。

ただそれも、
我々人間の脳は不完全なものであり、
脳自身がそれを認めたがっていないということなのかもしれない。

おそらく読後に、
不安になる人と、逆に安心する人の、
両極端に分かれるであろう本。