「解体諸因」(西澤 保彦)

バラバラ殺人事件のみを題材とした、
異色の推理短編集。

別に僕が猟奇マニアというわけではなく、
単に密室トリック好きとして、

この短編集の中の、
エレベーターが8階から1階まで降りる数十秒間に、
被害者がエレベーター内でバラバラにされたという作品(『解体昇降』)を、
読みたかったので。

目当ての作品については、
心理的な密室トリックになっており、
まずまず楽しめたのであるが、

他の作品については、
トリックとしては感心できるものもあったものの、

何と言っても、背景や人物設定が適当すぎ、
かつ文章自体にも読み応えがなく、

何というか、謎解きパズルを解いているような感覚で、
正直、ミステリーを味わう、という類のものではなかった。

すべての作品が、
「被害者はなぜバラバラにされなくてはならなかったか」
についての謎解きになっているので、

そのトリックを、このような短編ではなく、
そのままそれぞれ重厚な長編作品に利用していれば、

ひょっとしたら傑作になるものもあったのでは、、と、
ちょっと勿体ない気もしている。