「灯台鬼」(大阪 圭吉)

15分程で読了できる短編でありながら、
読後に絶妙な余韻を残してゆくなかなかの佳作。

舞台は、とある岬に立つ灯台。

人里からも、そして地上からも離れ、
ある意味密室ともいえる灯室で、
灯台守が惨殺される。

殺され方は奇妙極まりなく、
とても人の力では運べない巨大な岩が、
灯室の窓を破って飛び込んできて、
灯台守を下敷きにしてしまったらしい。

しかも、現場発見者によれば、
破れた窓から、蛸のようなヌメヌメとした赤い生物が、
逃げ出すのを目撃したという。

犯人は誰なのか、
そしてその殺害方法とは・・・。

密室トリック自体は、
僕があまり好きではない物理的なものなのだが、

しかしその大胆な発想と、犯人の殺害の動機、
そして何よりも、「蛸」の正体が分かったときの悲愴感、

これらが合わさって、
推理小説なのではあるが、胸を打つものがある。

さらに灯台という舞台自体が、
まさにこの物語にぴったりの、
ドロドロとした情念の捌け口として一役買っている。

青空文庫で無料で読めるのも嬉しい。