司馬遷 著「史記7 列伝三」(ちくま学芸文庫)
列伝とはいっても、
一応は年代順に並んでいて、

この「列伝三」は、大まかにいえば、
漢帝国(前漢)がようやく軌道に乗ってきた頃、

呉楚七国の乱や、
匈奴らの周辺諸国との争いが生じた時代のものである。

印象的というか、かなり特徴的だったのが、
「扁鵲倉公列伝」で、
ここでは扁鵲(へんじゃく)らが行った、
医術について語られているのだが、

どのような症状をどのように見抜いたか、
そして患者がどうなったか、
という具体例が、
これでもかというぐらい延々と続く。
※具体例の部分は後世の加筆らしいが。

あとは何といっても、
「李将軍列伝」と「匈奴列伝」。

中島敦の『李陵』は、
このあたりをベースにしていると思うのだが、

李陵についての記述は、意外と少なく、
ここから想像力を膨らませて、
あそこまでの小説にした中島敦の才能には、
あらためて驚かされる。

ちなみに「李将軍列伝」で主に語られるのは、
李陵の祖父である「李広」についてである。

もうひとつ挙げるならば、
「司馬相如列伝」。

政治家や武将が多い列伝において、
司馬相如のような文章家が取り上げられるのは、
珍しいが、

美辞麗句を連ねた賦を引用した箇所が多く、
漢文訓み下し文として、
思わず声に出して読みたくなる。