「木曜日だった男」(チェスタトン)

チェスタトンといえば、
「ブラウン神父シリーズ」で有名だが、

あちらが本格的な推理小説なのに対し、
この『木曜日だった男』は、
どちらかといえば冒険活劇に近い。

ネタバレしない程度にストーリーを紹介しよう。

とある無政府主義者集団の各リーダーたちには、
日曜日を議長とし、月曜日~土曜日という名前が付いている。

その7人が集まる会議に、
主人公の刑事が「木曜日」のフリをして潜り込むことに成功し、
そこで話されたパリ爆破計画を食い止めようと奮闘する。

他のリーダーたちとの騙し合いや妨害を経て、
遂にボスである日曜日を追いつめることになるのだが、
そこには驚くべき事実が隠されていた・・・。

この作品の面白さは、
何と言っても、主人公の「木曜日」が残りの6人と対決する中で、
6人の正体が次々と暴かれていくところ。

オチ的にはワンパターンの連続ではあるのだが、
6人それぞれとの対決の状況が、
さすがこの作者と言わんばかりの筆力で描かれていて、
読み応えがある。

特に主人公は詩人でもあるということで、
なかなか機智に富んだ表現を使うし、

そもそもが無政府主義者と警察との対立という枠組みなので、
政治的・思想的な色も濃い。

欲をいえば、
「ドンデン返し」部分のパターンがもう少しほしかったとの、
あとはラストがちょっと乱暴すぎるかな、、という気もするが、

20世紀の始めに書かれた古典だと考えれば、
十分であろう。

チェスタトンということで、
本格推理小説を期待して読むと肩透かしを食らうかもしれないけれど、
作品としてはとても魅力的だと思う。