山内 一也 著「ウイルスの世紀――なぜ繰り返し出現するのか」(みすず書房)
大きく3部構成になっていて、

・ウィルスとは何か
・新型コロナウィルスについて
・我々はウィルスとどう向き合うべきか

について書かれた本。

難しい説明はあまりなく、
その代わり具体的な事例の紹介が豊富で、

エボラウィルス、マールブルグウィルス、
二パウィルス、コロナウィルス、
そして今回の新型コロナウィルスなど、

それぞれがどのようなルートでヒトに感染し、
そしてそれがどのように発覚し、
どのように我々が克服したか(新型コロナはまだ克服してないが)、

について、
専門家の立場から分かりやすく説明している。

特に印象的だったのは、
天然痘ウィルスや、麻疹ウィルス、ポリオウィルスなど、

我々が根絶に成功できたウィルスは、
「ヒトにのみ感染するウィルス」
だということ。

ヒトにのみ感染するのであれば、
ワクチンさえ開発できれば、
感染拡大を防ぎ、いずれは打ち勝つことができる。

だが逆に、
野生動物が自然宿主であるウィルスは、

根絶が難しいのみならず、
まさにコロナウィルスのように、
姿を変えて、繰り返し我々を脅かすことになる。

太古にヒトが誕生して以来、
我々は知恵によって天敵を克服してきたが、

皮肉なことに、細菌やウィルスといった、
目に見えない敵に対しては、
あまりにも無防備である。

世界で一人でも死者を減らすために、
その「目に見えない敵」に対して、
我々は何ができるのか。

このような本を読むことで、
我々の闘いの歴史と、
そしてこれからすべきことについて考えるのも、
悪くなかろう。

ただ敢えて、この本の内容に難癖をつけるならば、
事実の紹介に終始している感があり、

特にこれから我々がどうすべきかについては、
もう少し著者な意見を聞きたかったかな。