アガサ・クリスティー 作、「そして誰もいなくなった」(クリスティー文庫)
孤島に集められた10人の男女が、
何者かに一人ずつ殺されてゆく・・・

という、
現代のミステリーで定番となった設定の、
まさに原点ともいえる作品で、

少年時代に読んで、
とにかく、怖い、
という印象だけが残っていたが、

ディテールはすっかり忘れていたので、
懐かしさを感じながら読んでみた。

童謡の歌詞どおりに、
一人ずつ消されてゆくというストーリーは、

謎解きというよりも、
確かにスリラー要素の方が強く、

子供の頃に怖かったというのも、
自分のことながら、頷ける。

そして強烈なのが、
エピローグだなぁ。

犯人が、真相を書いた紙をビンに詰め、
それが海を漂っていたのを拾われる、

という、
最近もどこかで読んだパターンだけれども、

その犯人の手記が、
犯行のトリックを明かしているだけではなくて、

殺人に対する動機というか、
執念というか、狂気というか、

人間の裏の顔を鮮明に描いていて、
これがまた、怖い。

どうやら僕は、
これを読んだ体験が、
記憶のどこかに根強く残っているので、

島や屋敷に招待された客が、
一人ずつ殺される、というタイプの作品に、
惹かれるということなのだろう。

何となくスッキリした。

それにしても、
「そして誰もいなくなった」は、

同工異曲の作品が量産されるほどの、
リスペクトされるべき傑作だというのが、
今回心底理解できた。

読み直して、大正解。