映画「25年目の弦楽四重奏」

映画「25年目の弦楽四重奏」
25年目の弦楽四重奏

前にこのブログで、「弦楽四重奏は人生の縮図だ」みたいなことを書いたことがあったが、
まさにそれをテーマにした映画。

「フーガ弦楽四重奏団」という架空のカルテットにおける、
メンバーの離脱、闘病、不倫、恋愛、音楽観の衝突、親子関係・・・etc.という事象が、
ベートーヴェンの傑作「Op.131」をベースに、描かれてゆく。

一番の見どころは、重病を患って引退を決意したチェリストが、
自らの演奏家人生にどのように幕を引くのか、という部分。

この映画は、考えられ得る限りでの、最高のシナリオを用意した。

紆余曲折ありながらも、最後の演奏会の幕が上がる。

演奏は順調に進むが、最終楽章に入ったところで、チェロの手が止まる。

奏者がひとり、またひとり演奏をやめ、聴衆は茫然となる。

チェリストは静かに席をたち、ステージの中央へと歩みを進め、このように語る。

「みなさん、私はもう衰えました。
いまの私に、このベートーヴェンを弾くことはできません。
この場で、新たなメンバーに席を譲ります」

そして登場した新メンバーにより、最終楽章が演奏される・・・。

演奏家が、演奏途中で自らギブアップして、そのキャリアを閉じるというのは、
まさに本望というものだろう。
当然、客席からも惜しみない拍手が送られる。

この映画を撮るには、まさにこのOp.131がうってつけであっただろう。

荘厳なフーガで始まり、軽妙なロンド、
巧妙なヴァリエーションを経て、フィナーレへ。

そして何と言っても、この曲はアタッカで演奏しなくてはならない、
というのがポイントで、

映画の中でも語られているが、アタッカで弾くことにより、
途中での調弦が不可能となり、演奏者は緊張を強いられるのだ。
そして、老チェリストは体力が限界となる・・・。

そんなチェリストを演じたのは、名優クリストファー・ウォーケン。
久々に、「眼で演技する」のを観た気がする。彼の演技は鳥肌ものだ。

演奏家を題材とした映画は、数多くあるが、
その中でもこの作品は、出色の出来栄えだと思う。

最高の音楽をベースにしながら、四人の人生ドラマを描いた傑作である。

適正価格:2,300円

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