映画「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」

前にこのコーナーで絶賛し「ロブスター」と同じ監督、
そして主演も同じく、コリン・ファレル。

内容的にも、不条理系サスペンスという点で似てるかな。

以下、多少のネタバレを含むあらすじ。

心臓外科医のスティーブン(コリン・ファレル)と、
眼科医の妻(ニコール・キッドマン)。

娘と息子の四人家族で、何不自由ない幸せな生活を送っていた。

そんな中、スティーブンのもとに一人の少年が現われる。

最初は別の女性との間の子供かな、、と僕は思っていたのだけれど、
話が進むにつれて、
かつて自分の患者だった男の息子だということが分かる。

そしてその少年が、まるでストーカーのように、
スティーブンとその家族につきまとうようになる。
(ここのイライラ感が結構ポイント)

どうやら、少年の父は、
スティーヴンによる手術のミスで命を落としたらしい。

そしてある日、スティーブンの息子が、
原因不明の病気で脚が動かなくなってしまう。

悩むスティーブンの前に現われたあの少年が、
こんなことを言う、

「あなたは僕の父を殺した。
なので、あなたの家族から一人犠牲になってもらう。

あなたの息子、娘、妻は、
1.脚が動かなくなる
2.食事を受けつけなくなる
3.目から血を流す
4.そして死ぬ
という4つのステージを味わうことになる。

3人がそうなる前に、誰か一人を殺せば、
あとの2人は助かる」

と。

最初は信じていなかったスティーブンだが、
娘も同様に脚が動かなくなり、
あらゆる手を尽くすが、解決策がない。

やがて、息子の目から血が流れ始め、
誰か一人を殺さなくてはならない、
という状況に追い込まれることになり、
遂に決断を下すことになる・・・というお話。

後味は悪いし、少年の付き纏い方もイライラするし、
かなり暗ーーい気持ちになる映画。

「ロブスター」のときとはまるで違う役のコリン・ファレルと、
ニコール・キッドマンという二人の名優が、

父として母として、そして夫婦として、
奇妙な現象に苦悩する演技が、
一番の見所かもしれない。

「ロブスター」のときは、ラストシーンでヤラれた感じだが、
今回のラストシーンは、かなり思わせぶりではあるけれども、
何を表したかったのかが、やや分かりづらい。

犠牲を出しながらも最悪の事態は免れた家族にとっての、
せめてものカタルシス、といった状況なのだろうか。

何が正義で何が悪か、というのは、
結局は視点によって変わってくるんだよね、とか、

夫婦と親子の関係はどっちが大切なのか、とか、

そういうことを探り出したらキリがないぐらい、
いろいろな深読みができる作品であることは間違いない。

ハリウッド以上、ヨーロッパ映画未満の硬派な映画を観たい人には、
是非オススメしたい。

適正価格(劇場換算):2,100円