映画「ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ」
2018年、イタリア・フランス・ドイツ合作の、
ドキュメンタリー映画。

第二次大戦中、
ヒトラーとその右腕だったゲーリングが、

高価な美術品を次々と「略奪」し、
自らの収集欲と虚栄心を満たしていたこと、

所有者のもとに戻らない、
あるいは行方不明のままの、
作品が未だに多数あること、

などを通じて、
文化や芸術までをも踏みにじった、
ナチスの蛮行を訴えるとともに、

最終的には、
人間と芸術作品との関係性や、
戦争とは何なのか、
を考えさせてくれる作品となっている。

まず驚かされたのは、
ヒトラーとゲーリングのコレクションについてだ。

ティツィアーノ、ミケランジェロ、ラファエロ、
ルーベンス、ベラスケス、ゴヤ、
レンブラント、デューラーなど、

ナチスの二人が競って「略奪」していたのは、
驚くほどの一級品ばかりで、

これほどまでの芸術作品が、
少しの間であっても、
これら「戦争犯罪者」の手にあり、

彼らの目と独占欲を、
満足させていたということが、
ゾッとさせられる。

次に、映画の中である評論家が、

「ヒトラーやゲーリングは、
中産階級であるがゆえに、
美術品収集という貴族趣味を真似ることで、
見栄を張ろうとしていた」

というような発言をしていたが、

僕は、
それは間違いではないにせよ、

この二人は、
純粋に美術品が好きだったのだと思う。

ただ、そこで考えさせられたのは、
知性や感受性の高い人すべてが、
美術を好きとは限らないが、

美術が好きな人は、
間違いなく知性や感受性が高いと思っており、

そしてヒトラーもゲーリングも、
そういった人物であったことは事実なのだが、

それがなぜ、
あのような愚行(戦争・ユダヤ人虐殺)を、
してしまったのか、ということ。

要するに、同じ人間の中に、
「美術好き」と「虐殺者」が同居しているということが、
僕には理解できなかった。

けれど、
そのような「狂気」を生み出すのが、
戦争というものなのだ、

ということを、
この映画からのメッセージとして、
受け取ったような気がしている。

コロナ禍でなかなか美術館にも行けず、
最初は軽い気持ちで見始めたのだが、
テーマは、なかなか重かった。

ちなみにタイトルには、
「ヒトラーVS.ピカソ」
とあるが、

ピカソは最後の方のエピソードに、
少し出てくるぐらいで、
あまりこのタイトルは信用しない方がいい。

適正価格(劇場換算):1,500円