映画『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』
2015年イタリアのドキュメンタリー映画。

毎年12月7日に始まる、
スカラ座のシーズン。

その初日に向けた準備の様子を辿りつつ、
アバド、ムーティ、バレンボイム、シャイーといった、
歴代の音楽監督のインタビューや映像、

かつて活躍した歌手たちや、
舞台裏を支える関係者の話を交えながら、

イタリアオペラの総本山ともいえる、
ミラノ・スカラ座の歴史と伝統、
そこに関わる人々のドラマ、
そしてその「重み」を伝える作品。

んー、言葉で伝えるのがすごく難しいが、
2時間弱という映画の中で、

この劇場がオペラの歴史に、
そして何よりもイタリア人の誇りと感性に、
どれほど多大な影響を及ぼしてきたのかが、
実に的確に伝わってきて、

イタリアオペラ好きの自分としては、
至福の鑑賞だった。

特に印象的だったのは、
これはよく知られた事実なのだけれど、

マエストロ・トスカニーニが、
スカラ座のデビュー公演として、
ワーグナーを選んだことについて、

バレンボイムがインタビューで、
「それだけは忘れないでほしい」
と強調していた部分。

「イタリアオペラのためのスカラ座」を、
この革新的指揮者が、

まさに「オペラ芸術の殿堂」にまで引き上げた功績は、
やはりあまりにも偉大である。

この映画が成功しているとすれば、
その理由は、音楽そのものよりも、
「人」に焦点を当てていることだと思う。

歌手や演奏者はもちろんなのだけれど、
関係者や裏方、そして観客をも含めて、
オペラは成り立つわけで、

「オペラ劇場」という空間に魅せられた、
それらの人々の想いや生き様を、
見事に伝えているところが、

この作品における、
もっとも優れた点ではないだろうか。

適正価格(劇場換算):2,000円