小説

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「虚無への供物」(中井 英夫)

夢野久作『ドグラ・マグラ』、 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』と並ぶ、 「日本探偵小説三奇書」と呼ばれていることを知り、 前2作のファンである自分としては、 読まないわけにはいかなかった。 読後の第一印象としては、 「奇書」というよりは、随分と手の込んだ傑作だなというもの。 1954年から55年にかけての、 洞爺丸事故や聖母の園事件といった、 社会を揺るがした実際の事件・事故をベースとし、 そこに「呪 […]

「宇宙のランデヴー」(アーサー・C. クラーク)

たまには小説が読みたくて、というか正確に言えば、 「宇宙的SF映画」が観たかったのだけれど、 最近コレ、といった作品がないので、 仕方がないので小説を、、と思い、 だったら、アーサー・C. クラークでしょ、ということで。 かいつまんで内容を説明すると、 22世紀、円筒形の謎の巨大物体(ラーマ)が太陽系に侵入、 ノートン中佐率いる宇宙船が着陸し、 ラーマ内部の探索を開始するのだが、 奇妙な地形、生物 […]

「ソラリス」(スタニスワフ・レム)

  タルコフスキーとソダーバーグの映画は観ていたのだけれど、原作は全然違うことを知った。 映画版の方は、人間の内面とか人間関係とか、 精神的な部分に焦点を当てていたように覚えているけれども、 原作は、そのものずばり、生命としての人間は何か、 もっといえば、生命とは何か、 というテーマに切り込んだもので、 であればこそ、系外惑星での生命体とのコンタクトという、 王道SFの形式を採ったのも納 […]

「阿Q正伝・狂人日記 他十二篇」(魯 迅)

  いわゆる『吶喊』と呼ばれる、魯迅の短編集。 中国近代文学を代表する作家ではあるが、 教科書に載っているイメージが強く、 そういう純文学的なものはめっきり読まなくなっていた。 ただ最近、「食人」について調べる中で、 『狂人日記』が食人をテーマにしているということを知り、 急に読みたくなったというわけ。 基本的には、古臭いというか、説教臭いというか、 お世辞にも面白いとは言えないものが多 […]

「幻の女」(ウイリアム・アイリッシュ)

年末にたまたま本屋で目に留まって買ったのだけれど、 ミステリー小説なんて読むのは、 記憶にないぐらい久しぶりかもしれない。 このジャンルにおける不朽の古典名作らしいので、 今更読みました、なんてのは気が引けるのも事実だが、 読んで後悔はしなかった。 主人公の死刑執行日から遡って、 タイムリミットの中で犯人捜しが行われる、 そして真犯人は実に意外な人だった、 と書くといかにも陳腐なようではあるが、 […]

「あなたの人生の物語」(テッド・チャン)

映画を観て、その原作を読みたいと思うことはほとんどないが、「メッセージ」だけは違った。 その原作である「あなたの人生の物語」を含めた、 同一作者による8つの中短編が収められているのが本書。 どの作品も深い科学的な知識に支えられた、 真の意味での「SF」といえるものだが、 やはりタイトル作品は映画を観たこともあり、 出色の出来映えだと思われる。 小説を映画化するについては、原作ファンからの賛否両論の […]

「富士」(武田 泰淳)

  武田泰淳の作品は20代の頃何作か読んだきりで、 その後特に興味もなかったのだが、 この『富士』という超大作があると知り、 怖いもの見たさ半分で読んでみた。 文庫本で600ページを超えるわけだから、 力作であることは間違いないが、 お世辞にも良作であるとはいえない。 精神病院を舞台にして、研修医である「私」と、 その患者たちとの関係を通じて、 人間ってものは、結局肉体によってしか生きら […]

「御馳走帖」(内田 百間)

  急に湧いてくる、百間先生熱。 この「御馳走帖」は、 たとえば何とか魯山人が書くような、グルメエッセイではない。 時には文句を言い、時には仲間と楽しみながら、 「自分なりの御馳走」を楽しむという、まさに百間ワールドの真骨頂。 だから食すもの自体は、焼き豆腐でも焼き油揚げでも、 なんでもそれは、「御馳走」となる。 いくつか面白かったものを紹介すると、 百間先生は毎朝「英字の形をしたビスケ […]

「大貧帳」(内田 百間)

  百間先生の「カネ」絡みの短編を集めた一冊。 「百鬼園随筆」などで読んだことあるものも多かったけれど、 こうしてあらためて、「カネ」をテーマにした文章をまとめて読むことで、 百間先生の面白さが再認識できる。 中公文庫、good jobである。 自分も会社を経営していたころは、 金策に困り、何か月も自分の給料を払えない時期があって、 今だから言うけれど、家賃を滞納したり、 買掛金の期限を […]

「山月記・李陵」(中島 敦)

  久しぶりに小説でも読もうと思って、 「本能的に」選んだのが中島敦だった。 思えば中学2~3年の頃、 文学少年だった自分は、 当時開成中学で漢文を教えていたH先生に声を掛けられ、 文芸部なるものを作り、 H先生に題材として提示されたのが、 中島敦の「山月記」と「悟浄出世」だった。 まだ少年の頃ゆえ、いくら文学作品が好きだったとは言っても、 海外文学ではヘッセとかトーマス・マンとか、 日 […]

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