火星がテーマという点からしても、
宇宙船でトラブルが発生し、ひとりぼっちになるという点からしても、
すでにこのブログでもいくつか紹介しているとおり、
似た作品を挙げたらキリがない。
それでも敢えてこれを観てみようと思ったのは、
主演がマーク・ストロングだから。
カッコいいですよね。
今やジェイソン・ステイサムと並ぶ、全国のハ○の希望・羨望の的です。
インテリっぽさと、ちょっとした気難しさがあって、
それがまさに今回の役どころにはぴったりなのですが、
ほぼ全編に渡る独り芝居。
まぁ、これぐらいのレベルの役者を使わないと、
作品として成り立たないというのも事実なのですが。
ストーリーとしてはエラく単純で、
土から酸素と水素を取り出して水を生成することに成功した主人公が、
人類初の火星への飛行士として、人類の希望を背負って旅立つ。
(その際、よくありがちな愛する家族との別れ・・
みたいな中途半端なドラマを一切挿んでこないところが、
個人的にはかなり好感が持てます。)
最初の2か月ぐらいは、順調に航行をこなしていたのですが、
あるとき、ちょっとしたミスで、
自らが開発した今回の目玉である「水生成装置」が故障してしまう。
さぁ、そこからが大変。
水がなくなるわけですからね。
破れかぶれになり、ヒューストンとの通信も自ら切断し、
もうダメかと諦めていたその時・・・
というお話。
ちなみに、エイリアンとかそういうのは一切出てきません。
テーマを一言でいうと、
自らの力を過信してしまった科学者の、プライドと絶望と孤独と・・・といったカンジで、
そこに宇宙空間というリアルな閉鎖空間がうまくミックスされていて、
個人的には十分楽しめた。
映像的な面でいえば、表現の巧拙はともかくも、
太陽フレアとか太陽嵐とかをきちんと描いていたあたりは、
今までの同工異曲作品にはあまり見られなかったように思う。
さて、よくこの手の映画を評するにあたり、
「リアリティがない」
という言葉を耳に(目に)しますが、
SFというのはもともと「Fiction」なのだから、
それはそれでいいわけで、
逆にその「Fiction」部分を、実はこうなんだよねーとか言って、
あとから能書きを垂れるのも、楽しみのひとつだったりするのです。
(さっきから僕の顔の周りを、やたら人懐っこい羽虫が飛び回っていて集中できないので、
一時中断。炭酸ガスに寄ってくるんですよね、このコたちは。)
さて、この作品に出てくる「Fiction」部分でありますが、
そもそも火星への有人飛行という設定を除外すると、
1.人工重力発生装置
2.水生成装置
この2つでしょうな。
1については、地球の重力圏を抜け出してそうそう、さらっと出てくるのですが、
これを現実化するのは、ちょっと難しい。
重力とは場の歪みであるという一般相対性理論に基づいて、
うまく宇宙船周りの場を歪ませることができれば別ですが。
(この作品には出てこないが、「ワープ航法」というのも同じ原理。)
重力は加速度と等価であるから、
事実上、重力を取り除くことは可能なわけだけれども。
さて、問題は「2」。
これがこの映画の肝です。
主人公は、
A.土から水素と酸素を取り出し、
B.それを再度結合させて水を作り出した
といっているわけですが、
Bのプロセスについては問題ない。
水素燃料はこの仕組みを利用しているわけで、
どうせなら水を作るだけじゃなく、その際に発生するエネルギーを、
宇宙船で効率よく使うべきなんじゃね?とさえ思う。
問題なのはAのプロセスの方で、
水素というのは宇宙で一番多い元素でありながら、
ともかく軽いので、とても土壌なんかに含まれているレベルじゃない。
じゃあ宇宙空間から取ればいいじゃない、と思うかもしれませんが、
宇宙空間というのは実は非常に希薄で、
1立方メートルあたり原子1つとかのレベルなので、これじゃとても役に立たない。
そんなわけで、「人工重力発生装置」も「水生成装置」も、
何となく簡単に実現できそうながら、とても難しい、
でもそれがないと、この映画が成り立たなくなってしまう、
それこそがまさに「Scientific Fiction」。
なのでここはダメ出しする所なのではなく、
それを堂々と正面に据えてきた、このSF映画のポイントとして楽しむべきではないでしょうか。
ただ、そのあたりのディテールをあまり楽しめない人には、
この映画はあまりにも退屈になってしまうかもしれず、
ほぼ同じような内容である、
これとか、これの方が、まだ楽しめるかもしれません。
適正価格(劇場換算):1,600円