2010年10月

「場末の酒場、ひとり飲み」(藤木 TDC)

新書は、良い。 文庫本で古典を読んだり、 ハードカバーでデザインや科学関連の本を読んだりするのも好きだけれど、 やはり新書を片手に酒をちびちびやるのが、 この上ない快楽だ。 と思ったら、 「場末の酒場、ひとり飲み」 なんて本を見つけた。 いきなり酒場の紹介から入るわけではなく、 そもそも場末とは何か、 という考察から始まるあたり、なかなか礼儀正しい。 そして場末の誕生にもいくつかのパターンがあるこ […]

「『半七の見た江戸』~「江戸名所図会」でたどる半七捕物帳」(今井 金吾 編)

綺堂が、かの「シャーロックホームズ」シリーズに触発されて、 「半七」シリーズを書いたことは有名だけれども、 ホームズ中に描かれたロンドンの風景の大部分が、 今でもそのまま残っているのに対し、 半七が見であろう江戸の風景、 そして地名でさえも、現在残っているものはほとんどない。 「半七」全編に登場する江戸の地名を、 ひとつひとつ図絵で紹介し、解説を付したのこの本だ。 かつて「半七」を読んだときには、 […]

「ドガ展」(@横浜美術館)

静物画、肖像画、風景画。 宗教画を除けば、絵画は静的なテーマであることが多い。 止まっているものを精緻に描く、 あるいは動いているものの時間を止めて描く、 例えばドガと同時代の印象派の手法というのが、 まさにそれだった。 けれどもドガの画は、 動いているものをあたかも動いているかのように、 もっと言えば、時間を止めずに対象を描いた、 数少ない画家であるかもしれない。 だから、ドガの画のテーマに、 […]

「~隅田川~江戸が愛した風景~」(@江戸東京博物館)

作家や美術館を冠にした展覧会が多い中で、 特定のテーマを掲げた企画展というのは、 開催する側にとっても骨が折れることに違いない。 今回の「すみだ川」展は、 開催側の気合もひしひしと伝わってくる、 すばらしい企画だと思った。 やはり江戸、そして東京は水の都。 わが国の首都の歴史は、 水運なくしては、語ることができない。 特に江戸の東端を南北に貫くすみだ川は、 水運という経済的な面はもとより、 多くの […]

「江戸のことば」(岡本 綺堂)

引き続き、綺堂を。 『江戸のことば』は「綺堂随筆集」とあるけれど、 怪談も数話収められている。 「半七」と同じで、綺堂の怪談でどれが一番優れているか、 あるいは怖いか、などと考えるのはあまり意味がなさそうに思う。 ただこの本に収められた「深川の老漁夫」は、コワい。 話しとしては特に捻りがあるわけではないのだけれど、 謎の漁師と獺(かわうそ)との関係が、 多くを語られていないだけに、異常さが際立って […]

「江戸っ子の身の上」(岡本 綺堂)

引き続き、綺堂を。 綺堂の随筆には動物がよく登場する。 動物といっても犬や猫のような愛玩動物ではなく、 蜘蛛だの、蟹だの、キリギリスだの、、 といった世間ではあまり注目されない存在を採り上げるあたり、 まことに綺堂らしい。 大袈裟に言ってしまえば、 アウトサイダーに対する愛情、 となるのだろうか。 綺堂が怪談を得意としたのも、頷ける。 『満州の夏』という随筆に、蠍の話がある。 「蠍は敵に囲まれた時 […]