「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」(中野 京子)
世界史ではなく絵の方に興味があるので、
本書を手にとってみたけれど、結果としては絵よりも、
歴史の面白さの方に引きずりこまれた結果となった。

姉妹編として「ブルボン朝版」の方も出ているけれど、
やはりブルボンとハクスブルクとでは、重みが違う。

「運命のいたずら」としか言いようのない歴史の渦に巻き込まれていく、
王朝の人々の悲劇を、
ここまで適確にかつ簡略に伝えた本は他にないのではないか。

我々が西洋の肖像画を眺めるとき、
その人物の背景にある歴史のことは、
あまり気にしない(というか、知らない)。

だから、単に、「うまく描けてる」とか、「美しい」とか、
そのぐらいの感想しか出てこない。

しかしひとたびその背景の歴史を知ってみると、
今まで見ていた絵が、ガラリと変わって見える。

「絵が語りかけてくる」というのはもはや陳腐な表現であるけれど、
歴史の底から、肖像画の叫びが聞こえてくる気がするのだ。

それにしても、王朝の人々は、みな物悲しい。

喜劇はひとつもなく、悲劇だけに彩られている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です