小、中、高、大、と、我々が受ける教育において、
歴史とは政治史がメインである。
つまり「学校で習う歴史」というのは、
政治=権力の何かしらの介入が行われているものであるから、
それをそのまま事実として受け止めるわけにはいけない。
誤解を恐れずに言えば、
歴史には、捏造とでっちあげの「物語」の側面がある。
だから視点を変えて、
文化史、とりわけその中でも傍流となる観点から歴史を眺めてみると、
意外な事実が浮かび上がってくることもある。
「妖怪と怨霊」などは、その最たるものだろう。
歴史上の出来事の中で、
「これは怨霊の仕業である」と片づけられてきたケースが、
いかに多いことか。
そういった意味で、
この本が扱っている題材はとても興味深いのだけれども、
内容としては残念極まりない。
おそらく著者の得意な分野については、
本書のテーマとは関係のないレベルでの議論が進み、
結果として何が言いたいのかがさっぱり分からない。
また、トピックス同士のつながりがないために、
テーマを一貫した分析というものが、まるでない。
新書にそれ以上のことを求めるのは酷なのかもしれないけれど、
この手の本を読むのは(自分も含めて)、
中途半端なものじゃ飽き足りない人たちばかりだと思うので、
大概の人は「期待はずれ」と思ってしまうのではないか。
せめて古代から近代までの「怨霊」を、
タイプ別に分けて分析するとか、その出現パターンを洗い出してみるとか、
有効なアプローチ方法はいくらでもあるはずである。
せっかくのテーマが、もったいない。