これを読んで最初に思ったことは、
写真家・カメラマンという仕事は、
典型的な「帰納的」職業なのだということ。
対象を追い、見つめ、そこからメッセージを抽出する。
時には画家のように「美」を語ることもあれば、
体制批判をする社会派になったりする。
世の中においては「演繹」的なアプローチというものは少ないが、
かといってすべてが「帰納」的であるというわけでもない。
帰納的になるべく具体からスタートするのだが、
そこからエッセンスを抜き出すことなく、
ただ「具体を消費する」ことだけで終了してしまう。
だがそれではもったいない。
「具体」をとことん、穴のあくほど見つめれば、
そこから「何か」が見えてくるはずだ。
その「何か」を語ったのが、この本。
著者が抉り出しているのは、
高度成長時代の日本の闇、だけれども、
それだけではないと思う。
今の時代に読めば、
またそれなりの「何か」に気づくはずだ。