既に古びてしまったと思われる説もあれば、
思わず、ホントかよ?とツッコミたくなる説もある。
しかしながら、僕も聞いたことのないような文献をベースに、
フィールドワークをそこに加え、
大胆かつ緻密な結論を導く、柳田 国男の民俗学は、
誰にも到達できぬ高みにある。
一目小僧や巨大な入道。
21世紀のいま、
もはやそんなものに興味を示す子供などいないと思うが、
僕は中学生のときに、ふと何かの文献で、一つ目小僧の由来を知り、
民族の記憶とも言うべき伝説の奥深さに、
驚嘆したことを今でも覚えている。
だが柳田先生はこの本の中で、
僕の知っている一つ目小僧の由来を、明確に否定している。
別に本の内容を紹介するのが、このブログの本意ではないので、
詳細は書かないけれども、
なるほど、そういうこともあり得るかもしれない、と、
再び少年のときの気持ちに戻って感服できる。
それが柳田民俗学の、面白さである。
代田橋という地名が、
「ダイタラ法師」に由来するということは、知っていた。
しかし、肝心のダイタラ法師とは何かについて、
詳細に論じたものには出会ったことがなかった。
それをこの本の中に見つけたとき、
まるで、しおり代わりにしていた昔の恋人の写真が、頁の間から落ちてきたような、
気恥ずかしいような申し訳ないような、何とも言えない気持ちになった。
※現存するのか分からないが、かつて代田橋には、
ダイタラ法師の足跡と伝えられる、巨大な足跡が存在していたらしい。
読書によって知的好奇心がくすぐられる楽しさを、
いまだに教えてくれるのが、柳田民俗学である。