科学の世界は常に進展していくものだから、
古い本では、誤りを述べている場合もある。
しかし、そうでありながらも、
「読んでおくべき古典的名著」というものがあって、
この本がまさにそれにあたる。
内容を端的に述べるならば、
生物の眼には、この世界がどのように見えているか、ということになる。
いや、厳密に言えばそれは誤りで、
「この世界」というのは、あくまでもヒトが知覚している世界なわけで、
それが「絶対的世界」では、決してない。
ハヤブサにはハヤブサの、カタツムリにはカタツムリの、
見えている空間、感じている時間があるのであって、
要するに、各種生物の知覚を通じることで、
この世界の相対性を浮き彫りにしようというのが、本書の狙いである。
よく「地球にやさしい」という言葉を耳にするが、
それは言い換えれば、「ヒトにとっての地球にやさしい」ということで、
もっと端的にいえば、「ヒトにやさしい」ということだ。
「ヒトが良いと思っている環境」が、
他の生物にとって必ずしも良いとは限らない。
生物によっては、大きなお世話だ、と言いたいものもあろう。
では、どうするべきなのか。
その答えまでは、この本からは読み取れない。
ただ、現代人が忘れている視点を思い出させてくれるという意味で、
古典は貴重なのである。