実に25年ぶりに、聴いてみた「ザ・グレート」。
結構評価に苦しむ曲かもしれない。
これがシューベルトの交響曲第1番、というのなら分かるのだが、
天才作曲家最後の、それもあの「未完成交響曲」よりも後の作品なのだから、
なおさら評価が難しい。
ひと言でいってしまえば、大雑把。
「未完成」にあった緻密さは、ほぼ存在しない。
それどころか、特に弦楽器のユニゾンの多用など、
オーケストレーション的に、「ん??」と思える箇所が多々あるし、
申し訳ないが、芸術作品としての深みに欠ける。
とはいっても、天才作曲家最後の交響曲。
聴き所もたくさんあるわけで、
特に全楽章にちりばめられた美しい旋律は、
メロディメーカーであるシューベルトの、
面目躍如たるところだろう。
もしかしたら、シューベルトの溢れ出る才能が、
当時の交響曲という枠組みの中では、
納まりきらなかっただけなのかもしれない、
とも思う。
個人的には、牧歌的な雰囲気の中にも哀愁を含んだ第二楽章と、
動と静とが絶妙に絡み合う第三楽章が好きだ。
ここで紹介する演奏は、
若き日のリッカルド・ムーティ×ウィーン・フィル。
僕の中のムーティは、「レガートな」指揮者なわけで、
こういう曲はまさにうってつけ。
ウィーン・フィルの壮麗なアンサンブルも見事な、
名演だと思う。
全曲一時間、思わず聴き入ってしまった。