文楽二月公演

朝からの大雪で、この日に参加予定だった義太夫の体験教室は、
午前中早々に義太夫教会から、中止の電話があった。

雪はますますひどくなるという予報だったので、
これは夜の文楽は中止かな、、と半ば諦めて、
国立劇場のホームページにいつ中止のお知らせが出るかと思っていたら、
なんとなんと、「8日9日は、予定どおり上演します」という掲示。

さすが。芸は天候なんぞには屈せず、ということか。

初日ということもあって、ネットで予約したときはほぼ満席だったのだが、
行ってみると、半分ぐらいが空席になっていた。
おそらく雪で来るのを断念された方もいるのだろう。

さて、僕が聴く第三部は、「御所桜堀川夜討」の「弁慶上使の段」から始まる。

いきなり竹本三輪大夫の美声にすっかり聞き惚れてしまい、
後半の竹澤團七さんの、表情豊かな三味線に度肝を抜かれ、
そして何ともドラマチックなストーリーに、恥ずかしながら、思わず涙が出そうになった。

豪傑弁慶の、若き日の恋と、忠義と親子の愛の間で揺れる感情。

それが、大夫の熱い語りと、時に繊細に時に奔放に奏でられる三味線によって、
切々と演じられるこの場面は、正直、ヴェルディやプッチーニのオペラにも負けていない。

大夫一人と三味線一挺、そして演じるのは人形だということを考えると、
人形浄瑠璃、そして義太夫節の、高度な芸術性を、はっきりと実感できる。

後半は、「本朝廿四孝」から「十種香の段」と「奥庭狐火の段」。

ここでは特に、吉田文雀さんと吉田蓑助さんによる、人形遣いの名人芸を堪能できた。

特に蓑助さんが操る八重垣姫が、勝頼の絵姿を前に嘆く冒頭の場面(上の写真参照)。

後姿の動きで人形に心情を語らせる巧みさは、流石としか言いようがない。